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生活

心無い騒音の苦情「赤ちゃんを虐待しているなら、警察に通報します」手紙を受け取った夫婦の体験

更新日:

“赤ちゃんの泣き声がうるさい”とクレームの手紙をもらった妹夫婦。

それが元で、引っ越しから4か月も経たない内に、また引っ越しをすることになりました。

赤ちゃんの泣き声が嫌いな方もいらっしゃると思います。

でもその裏では、親たちも奮闘しているんだということを知っていただけたら嬉しく思います。



騒音の苦情を伝える匿名希望の2通の手紙

7月も終わりかけの夏の昼下がり。

「あーもう早く早くっ! 窓、すぐに締めてっ!!」とキッチンから妹が大声で言いました。

私のすぐ近くでは、姪が泣いています。

「どうしたの?」と聞くと、「この前、泣き声がうるさくて迷惑しているってポストに手紙が入っていたの」と妹。

「え、そんなことで苦情の手紙?」と思いながら、慌てて窓を閉めました。

私は夏休みを利用して2カ月になる赤ちゃんに会うめに、離れて暮らす妹の家に遊びに来ていたんです。

その日は暑いといっても、冷房を入れるほどではなく、網戸にしておけばいい風が入ってくるような日でした。

お昼を食べ終えて一息つけようとした矢先、姪が「オムツを替えて欲しい」と泣き出したんですね。

妹は大きな声で泣いている姪の口元を手の平で押さえながら、「シーッ、お願いだから静かにして!」と緊張感で顔を引きつらせながら別の部屋に移動して行きます。

数分後、泣き止んだ姪と共に戻って来た妹の表情は、とても疲れ切っていました。

見ているこちらも切なくなるほど。

「これがそうだよ」と渡された2通の手紙を読んでみると、そこには「ヒステリーのような赤ちゃんの声がうるさくて、迷惑しています。

夜、眠れないので何とかしてください」「この前もお願いしたはずです。虐待ではないですか?もしそうならば警察に通報します」と書かれていました。

「虐待?警察に通報?」と読んでいる私にも、緊張や怒りにも悲しみにも似た、やるせない気持ちが湧いてきました。

匿名だったので、誰からなのかわかりませんでしたが、もしかしたらお隣の奥さんだろうとのこと。

引っ越し後、遮音対策もしたけれど…

以前彼女たちが住んでいたところは、子どもお断りのマンションだったので(こういうところもあるんですね)、姪を授かった時に引っ越しなければなりませんでした。

新たに越してきたこの場所は、20世帯くらいが住めるファミリー向けのマンションです。

妹夫婦の家は1階の2DKで、右隣は一人暮らしのサラリーマン、左隣は子どものいないご夫婦、上の部屋にも一人暮らしのサラリーマンが住んでいました。

引っ越しが終わった次の日に、挨拶に行ったのでわかったそうです。

その時には「赤ちゃんがいるので、ご迷惑をおかけすることがあるかもしれません」と伝えたとのことでした。

1階の間取りは全戸同じで、お隣の家との境はダイニングキッチン。

自分の家の部屋とお隣の家の部屋が背中合わせでないのもあって、彼女たちはそこに住むことを決めたと言っていました。

それでも万が一ということで、寝室の壁にはタンスを置いたり吸音マットを貼ったりして、少しでも姪の声が漏れないようにしていました。

でも、これだけでは遮音しきれず、手紙をもらうことになりました。

実にすごい、赤ちゃんの大泣きの周波数

突然ですが、人が敏感に反応しやすくて聞き取りやすい周波数ってご存じですか?

それは、2,000Hz~4,000Hz。

家電製品の「ピー」「プー」という警告アラーム音、女性の危険な時や恐怖の時に出る「キャァー」という叫び声、黒板を引っ掻いた時の「キィィ」という音、スズメの「チュンチュン」というさえずり、スズムシの「リンリン」という鳴き声がこの範囲にあります。

ちなみに周波数とは、1秒間に空気が振動する回数のことで、山と谷で1組の音波が1秒間に何度繰り返したかを表し、周波数の高い(振動回数の多い)音は高い音、周波数の低い(振動回数が少ない)音は低い音になります。

人の耳は20Hz~20,000Hzの周波数を捉えることができますが、日本人の一般的な会話の周波数は、男性で500Hz、女性で800Hz。

赤ちゃんの泣き声は通常200~600Hzなのですが、何かを訴えて大声で泣く時には、先ほどの人が敏感に反応しやすくて聞き取りやすい周波数くらいにまでなります。

あんなに小さい体なのにすごいパワーですね。

女性の叫び声や黒板の引っ掻き音は、警戒心を感じたりゾクゾクするような不快感を感じたりしますが、一説によるとそれらの音は、二ホンザルが仲間に命に関わる警告を知らせる音の周波数と似ているとのこと。

だとすると、1時間おきくらいに聞こえてくる赤ちゃんの泣き声を「嫌だ」と感じてしまう人がいるのも無理もありません。

騒音苦情の手紙を出す前にこう考えてもらえたら嬉しいです

「今日は仕事で疲れたから家でゆっくりしたい」「好きな本を読んだり、好きな音楽を聴いたりしたい」「のんびり昼寝したい」そう思っていたところに、自分の身を脅かすような音が聞こえてきたら、それは苦痛だと思います。

イヤホンをしたり、ヘッドフォンをしたりしても、耳に入ってくることもあると思います。

「言われなくてもそう何度も思おうとしたの」と思われるのは承知の上ですが、赤ちゃんの泣き声が嫌いという方は、ちょっとだけこう考えていただけないでしょうか?

私たちもここまで大きくなるのに、姪たちのように同じ過程を経てきました。

「お腹が空いた」「オムツ替えて」「抱っこして」「ひとりにしないで」と、親や周りの人たちが「またか・・・」とうんざりするような大泣きを繰り返してきたはずです。

「もういい加減にしてよ」と思われた日もあったでしょう。

それでもその人たちが、毎日面倒を見てくれたからこそ、今の自分があるはずです。

記憶にない時のことだから思い出すことはできません。

でも、想像することはできるのでは、と思います。

子どもを持つ親たちも、あれやこれやとそのための策を練っているはずです。

可愛い我が子ですら、いつまで続くのかわからない夜泣きにヘトヘトになっています。

ひとりになってボーっとしたい時間があったとしても、その時間が持てずに日々奮闘しています。

どうぞ排除したい気持ち、苦情を言いたい気持ちが出てきたら、このことを思い出していただけたら嬉しいです。

そして、もし建築会社の方たちがご覧になっていたら、ぜひ、これからの家づくりは防音や遮音の工夫をお願いします。

皆か居心地よく暮らせたら、そこは人が多く集まる素敵な場所になると思います。

最期に

なぜ隣の奥さんが投函したのではないかという話ですが、引っ越しが終わって大家さんに挨拶に行った際、こう言われたそうです。

「そう言えば思い出したんだけれど、お隣さんは長いこと不妊治療していたらしいよ。以前は他の階のお子さんを見ると可愛がっていたんだけれど、最近は仕事も辞めて自宅にいることが多かったみたい」と。

犯人が誰かという問題ではありません。

もしかして隣の奥さんではないかもしれませんが、もしそうだとしたら、その方にもいろいろな思いがあったのだと思います。

それもそれで切ない話です。

今は姪も7歳になりました。

4歳になる弟もいて、親子共々毎日元気にしています。

皆がそれぞれお互いを受け入れ合って生きていける、そういう心の余裕が持てる世の中になりますように。

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