干し柿を揉む理由は大きく分けて「渋みを上手に抜くため」「食感を良くするため」という2つがあります。
干し柿は揉まずにそのまま干しておいても作ることができます。ですが、白い粉を吹いた甘い干し柿にしたいとか、ネットリとしたあの独特の食感を再現したいという場合は必須の作業なんですよ。
では、どうして干し柿を揉むと渋残りがなくなり食感が良くなるのか、その辺りを詳しく解説していきますね。
この理由を知っていると、より美味しい干し柿を作るポイントも見えてきますよ。
干し柿を揉む理由①渋残りがなくなる

干し柿に使われる「渋柿」は干して乾燥する間に「渋み」が抜けていきます。ですが、そのまま干しているだけだと、どうしても乾燥ムラができてしまうんですよね。
特に柿の上の肩の部分とお尻の部分はすぐに乾燥してしまいます。
干し柿なのだから早く乾燥することはいいことのように思われますが、あまりにも早く乾燥してしまうと渋が抜け切らないんです。
干し柿を揉むと水分が滲み出てくるため、柿の中の水分を均一にすることができます。すると、柿の肩やお尻の部分も完全に乾燥しない状態を保てるというわけです。
干し柿に渋みが残ってしまうという悩みがよくあるんですが、これは均一に揉めてなかったからということですね。
柿全体をちょうどよく乾燥させるために、しっかりと揉んであげることはすごく重要なんですよ。
干し柿の渋はなぜ抜ける?
干し柿の渋がなぜ抜けるかというと「タンニン」という渋み成分が、水に溶けにくくなるからです。
干し柿に使用される「渋柿」にはタンニンという渋み成分があります。
この渋み成分は水に溶けやすいため、そのまま食べると唾液に溶けだしてしまいます。
なので私たちは、渋柿そのままではとてもじゃないけど食べることができないんですね。
ですが、柿の皮をむくと表面に膜ができ柿の細胞が呼吸できなくなるので、柿の中でアルコールができます。
そのアルコールが酸化すると「アセトアルデヒド」という物質に変化。
アセトアルデヒドが渋み成分の「タンニン」と結びつくとタンニンが水に溶けにくく変化するんです。
タンニンが溶けださなくなるので、私たちは柿の甘さだけを堪能できるようになります。
ちょっと用語が分かりずらかったと思いますが
タンニン+唾液=渋!!
そこで…
柿の皮むき→柿に膜ができる→アルコール発生→アセトアルデヒド完成
アセトアルデヒド+タンニン+唾液→渋み溶けださない=甘!!
って感じです。昔の人はこんな科学的なことは考えてなかったと思いますが、経験として柿の皮をむいて干したら甘くなるって知ってたんでしょうね。素晴らしい知恵です。
ちなみに、このことから干し柿を作る時は皮をしっかりむいて、柿表面に膜を作ることがとっても大切という事もわかりますね。
干し柿を揉む理由②食感がよくなるから

干し柿を揉む理由の2番目は食感がよくなるからです。先に述べた通り、干し柿は揉まなくても作ることができます。
ですが、揉まないと肩とお尻の部分が先に乾燥してしまいます。
すると中まで乾燥してくるころには、外側はガチガチになってしまうんですよね。
干し柿は外側がキャラメルのような、そして内側が独特のねっとりトロッとした感じが特徴。
ですが、揉まないと歯ごたえばかりが強くなり、あの食感にすることが難しくなってしまいます。
また、揉むことによって柿の内側から水分と一緒に糖分も出てきますから、完成した時に白い粉を吹かせることもできるようになります。
食感・味ともに良くなるので、揉んであげた方が美味しい干し柿を作ることができますよ。
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干し柿を揉むタイミング
干し柿を揉むタイミングは、柿を干し始めてからだいたい1週間ほどが最適とされています。
天候にもよりますが、1週間ほどすると柿の表面が乾燥して少し硬くなってきます。その時が1回目の揉むタイミングです。
まだ表面が柔らかいので、両手の人差し指と親指を使って優しく揉んであげましょう。この段階の柿は水分が多くカビやすいのでビニール手袋をするか手指をしっかりと消毒してから揉んでくださいね。
あまり強く揉むとせっかく柿の表面にできた膜を破いてしまうので、あくまでもゆっくりと優しく揉むのがポイントです。
最初は揉みずらいかもしれませんが、次第にほぐれてくるので根気強く揉んであげてください。
また、不適切なタイミングとして雨の日の前日・当日があります。このタイミングで揉むと柿の中から出てきた水分が蒸発せずカビやすいので気を付けてくださいね。
干し柿を揉む回数
干し柿を揉む回数は2回程度という方が多いです。
1回目で破れない程度に揉んだ後、だいたい5日~7日程度空けて2回目です。2回目は1回目の時よりも柔らかくなっているので、芯の方までしっかりと揉んであげてくださいね。
場所によって乾燥具合が違うので、色々な角度からほぐすことが大事です。そうすることで、水分が均一になるので全体的に甘くて美味しい干し柿に仕上げることができます。
また、干し柿は最初の下処理の段階で焼酎を使うことによって、よく揉んでもカビにくい干し柿にすることができます。
その処理の方法は以下の記事で手順を詳しくまとめていますので、よければご覧ください。食べごろの判断の方法も解説しています。
>>干し柿の作り方!室内でも焼酎を使えばカビの発生を防いで失敗知らず
干し柿は毎日揉むべきなのか
中には干し柿は2回目のタイミング以降、毎日揉んだ方がいいという方がいます。
干し柿は揉めば揉むほどねっとりとした状態になりますし、甘さも均一になるので確かに毎日揉むのもありです。
ですが、家庭で干し柿を作る場合は「何度も柿に触れる」ということになります。それだけ菌も付きやすくなるのでカビや雑菌も繁殖しやすくなるということ。
ですからもし干し柿作りに慣れてないようでしたら、始めは「2回揉み」がおすすめです。2回も揉めばびっくりするくらい甘い干し柿になりますから。
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干し柿を揉むと黒くなる話

ちなみに干し柿を揉んだら黒くなってしまった…という悩みがたまにあります。
これは実は変化して水に溶けにくくなったタンニン(不溶性)が揉むことで表面に浮き出てきたもの。
ですので逆に、揉んで黒くなるのは甘くなった証拠なんですよね。
では、揉まなかったからといって黒くならないか?というとそうでもなく、市販されている干し柿のように綺麗なオレンジにならないのは「硫黄燻蒸」という特別な処理をしていないから。
これは家庭することは難しいので、黒くなるのは仕方のない事と捉えるのが一番だと思います。
まとめ
甘い干し柿を作るために、揉むという作業は必須です。
揉まずに自然乾燥だけで干し柿を作るという方もいますが、そうすると乾燥ムラができてしまいます。
あまりにも早く乾燥してしまった部分は、渋柿に含まれる渋み成分がそのままになってしまいますので、丁寧に揉んで水分を均一にしてあげてくださいね。
また、干し柿特有のねっとりとした食感も揉むことによって生まれますから、芯までしっかりとほぐすように揉んでください。